本記事では、「特定技能」という在留資格について、初心者にも理解できるように丁寧に解説します。特に、技能実習からの移行や初めての来日を考えている方にとって、正しい情報を得ることはとても重要です。制度の全体像、必要な手続き、注意点について、行政書士などの専門家が実務でよく扱うポイントも踏まえてご紹介します。
1.特定技能とは
「特定技能」は、外国人が日本で就労するための在留資格のひとつで、2019年に制度がスタートしました。背景には、日本国内の人手不足があります。とくに介護、建設、農業、外食業などの分野では、外国人労働者の力が必要とされています。
この制度は、ある程度の日本語能力と業務に関する知識・技能を持つ外国人が、日本の企業で直接雇用されることを前提としています。
2.特定技能には2つの種類がある
2-1|特定技能1号
- 比較的基本的な業務に対応する在留資格
- 上限:通算5年まで(更新可)
- 同一分野・同一企業内で転職可能(条件あり)
- 家族の帯同は原則不可
- 試験(技能と日本語)の合格が必要
- 対象分野は12分野(2025年4月現在)
2-2|特定技能2号
- より高度な熟練技能が必要
- 在留期間の制限がなく、永住申請の可能性あり
- 配偶者・子の帯同が可能
- 2025年時点で認められている分野は建設、造船・舶用工業など
本記事では、主に「特定技能1号」について解説します。
3.対象分野(特定産業分野)
特定技能1号の対象となる分野は以下の12分野です。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材産業
- 産業機械製造業
- 電気・電子情報関連産業
- 建設業
- 造船・舶用工業
- 自動車整備業
- 航空業
- 宿泊業
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
※2025年現在、一部分野で制度の見直しが検討されています。最新情報は出入国在留管理庁の公式発表をご確認ください。
4.特定技能1号で働くための流れ
step①希望分野を決める
まず、自分の経験や希望に合った分野を選びます。技能実習を修了した分野と一致していると、手続きがスムーズになることが多いです。
step②日本語試験と技能試験に合格する
以下の2種類の試験に合格する必要があります。
→日本語試験(いずれか1つ)
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
※いずれも日常生活に最低限必要な日本語能力を測定します。
→技能試験
各分野ごとに定められた試験に合格する必要があります(例:介護技能評価試験、外食業技能測定試験など)。
※技能実習2号を「良好に」修了した方は、これらの試験が免除されることがあります(対象外の分野もあるため要確認)。
step③ 受け入れ先企業を見つける
試験に合格した後は、実際に雇用してくれる企業を探します。
- 登録支援機関や送り出し機関と連携して進めることが多い
- 求人内容や契約条件を必ず確認すること
- 労働条件通知書や雇用契約書のコピーを受け取っておくことが重要
step④在留資格の申請手続き
雇用が決まったら、次は在留資格の取得です。
→主な申請書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 雇用契約書の写し
- 日本語試験・技能試験の合格証明書
- 支援計画書(登録支援機関が作成)
- パスポート・証明写真など
企業や登録支援機関が多くの書類作成を支援してくれますが、最終的には正確な書類提出が必要です。不備があると審査が長引いたり、不許可になる場合もあります。
step⑤ 入国・就労開始
在留資格認定証明書が発行されると、それをもとに日本大使館で査証(ビザ)を申請し、日本に入国します。
入国後は、登録支援機関から日本語学習、生活相談、行政手続き支援などを受けながら、企業での勤務を開始します。
5.よくある悩み・注意点
5-1|技能実習から特定技能への移行
技能実習2号を良好に修了した場合、同一分野であれば、試験が免除されて特定技能1号に移行できることがあります。ただし、書類審査は必要であり、在留資格の切り替えには一定の期間がかかります。
5-2|家族の帯同はできるか?
特定技能1号では、配偶者や子どもの帯同は原則として認められていません(特定技能2号では可能です)。
5-3|更新の上限とその後の進路
特定技能1号は通算5年が上限です。5年を超えて働くには、次のいずれかを目指す必要があります。
- 特定技能2号への移行(一定分野のみ)
- 他の在留資格(例:技術・人文知識・国際業務など)への変更
- 一度帰国し、再度新たな資格で来日する
6.アドバイス
- 契約内容をしっかり確認すること
雇用条件(給与、勤務時間、仕事内容)は書面で確認し、不明な点は支援機関や専門家に相談しましょう。 - 悪質な仲介業者に注意
不当な手数料を要求する業者や、虚偽の情報を提供するケースもあります。送り出し機関や登録支援機関の正当性を確認してください。 - 在留期限の管理を忘れずに
在留カードの有効期限前に必ず更新手続きを行いましょう。手続きは満了日の3か月前から可能です。
7.まとめ
特定技能は、日本で働きたい外国人にとって、制度として整備された重要な在留資格です。とはいえ、必要な条件や手続きは決して簡単ではなく、正確な情報と丁寧な準備が欠かせません。
以下のポイントをしっかり押さえておくことが大切です。
- 日本語・技能試験の合格、もしくは技能実習の修了
- 信頼できる雇用主・支援機関の選定
- 適切な申請書類の準備と在留期限の管理
不安なときは、登録支援機関や行政書士などの専門家に相談しましょう。
次回は「配偶者ビザってどうやって取るの?必要書類まとめ」を予定しています。在留資格は種類によって要件や手続きが異なるため、ひとつずつ丁寧に理解していきましょう。
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